いくつもの仕事を同時に抱えていても、頭の中にあることをすべて外に出し、いつでも見える状態にしておけば、目の前のことに安心して集中できます。私はこれを「頭の中の見える化」と呼んでいます。考えていることを、外の記録、いわば第二の脳に移しておくことです。
覚えておけば何とかなる、の限界
人はつい、覚えておけば何とかなると考えます。けれども、頭の中だけで抱えられることは、思っているより少ないものです。仕事、家族、仲間、自分。それぞれの役割に細かなやることがあれば、同時に動いていることは数十にもなります。そこにアイデアや目標も加わります。
これを全部頭の中で回そうとするから、いつまでもモヤモヤが消えないのだと思います。
手帳、付箋、メール、パソコン。どこかに書いてあるから大丈夫と思っていても、いますぐ全体を見渡せるでしょうか。見に行くのが面倒になると、結局は記憶に頼り、「確かこうだった」とあいまいなまま動くことになります。
一度、すべてを書き出す
最初の一歩は、抱えている案件や考えを、すべて書き出すことです。忙しいときこそ、数時間を確保してでも洗いざらい出してみることをおすすめします。
書き出してみると、意外と「こんなものか」と気づきます。終わりのない仕事に追われていると感じていたのは、全体が見えていなかっただけのことが多いのです。それだけで、頭はずいぶん軽くなります。
全体が見えると、いま自分がどこに立っているのかが分かり、次に何をするかを落ち着いて考えられるようになります。
道具は一つに絞り、何度も見る
道具は、紙でもデジタルでも構いません。大事なのは、一つに絞り、すべてをそこに集めることです。私は長く Todoist を使っています。
そして、何度も、何度も、全体を目で見て確かめます。頭の中で思い出そうとするより、見るほうがずっと楽です。パソコンでもタブレットでもスマートフォンでも同じものが見られれば、院長室でも、診察室でも、外出先でも、思いついたときにすぐ確かめられます。
記憶に頼らない仕組みが、人を本質に戻す
これは、医療の現場でこそ大切だと感じています。忙しい診療の中で、一人ひとりの記憶や気配りに頼っていると、抜けや漏れは必ず起きます。それは誰のせいでもなく、人の頭の性質です。
だから、チームで共有すべきことは、一か所に集めて誰でも見られる形にしておく。人を増やして見落としを防ぐ前に、記憶に頼らなくてすむ仕組みを先につくる。そうすれば、頭の余白は、目の前の子どもとご家族のために使えます。
便利な道具は使う。けれども、目の前の人に向き合う姿勢は手放さない。その均衡を、これからも大切にしていきます。
関連して、ひらめきを置く場所を、一つに決めるも書いています。
この考え方を自院でも取り入れてみたい医療機関の方は、「医療機関の方へ」のページからご連絡ください。
文:小森広嗣(小児外科専門医)
