「仕組みが大事なのは分かった。では、具体的に何を入れればいいのか」
考え方の話をすると、最後はこの問いになります。この記事では、私の現場で実際に入れてきた仕組みを、ボトルネック(毎日の診療の中で、時間が消えている所・仕事が止まっている所)だった場所ごとに並べます。どれも、一つの医院で、一つずつ確かめながら入れてきたものです。
現場の流れ
── 受付から、お帰りまで
| ボトルネックだったこと | 入れたもの |
|---|---|
| 電話が鳴るたびに、受付の手が止まる | 電話の自動応答と、用件ごとの行き先の地図 |
| 予約・問診・お会計に、受付の手がとられる | 予約・問診・お会計の流れを、患者さんご自身が進められる形に整えた |
| 処置のたびに、二人の手がふさがる | 子どもを安全に支える道具と手元のライトで、一人でできる段取りに |
| 人が休んだ日は、その朝に考えている | 休んだ日の手順を、一枚の紙に |
| 小さな引っかかり(待ち・二度手間・取り違え) | お金をかける前に、間をつくる。診察室のプリンター、体重を自分で測っていただく流れ、置き場所の見直し |
| 在庫切れ・点検の漏れ | 在庫と点検を、一覧で確かめられる仕組みに |
診療の記録と説明
── 診察室の中と外
| ボトルネックだったこと | 入れたもの |
|---|---|
| カルテを書く時間が、外来のあとに積み上がる | AI と一緒に書くカルテ。話し方の型をそろえ、医師が確かめて仕上げる |
| 同じ説明を、一日に何度もくり返す | 説明を診察室の外に置く。医師本人が出る動画と、説明のページ |
| 受診の前に、知っておいてほしいことが届かない | 問診の案内やお知らせから、受診の前に読める流れをつくった |
| 診察のあとの、ご家族とのやりとり | やりとりの文面の型を、院長とスタッフで同じものにそろえた |
人と組織
── 教える、迎える、卒業を見送る
| ボトルネックだったこと | 入れたもの |
|---|---|
| 新しい人に、毎回ゼロから教えている | 職種ごとの章(本文・確かめる表・短い稽古・現場のカード) |
| 「これはどうしますか」と、同じ判断を何度も聞かれる | 同じ判断を2回したら、紙か章に移す決まり |
| 案内の言葉が、ページや人によって違う | 案内の正本を一枚に決め、お知らせ・掲示・スタッフの一言は、そこを指す |
院長の裏方
── 書類と数字と、考える時間
| ボトルネックだったこと | 入れたもの |
|---|---|
| メールや書類、行政の手続きに埋もれる | AI を秘書にして、下書き・仕分け・期日の管理を任せる |
| 経営の数字が、見えないまま決めている | 数字を毎月自然に見られる仕組み。望む働き方から逆にたどり、仲間の人数に合わせて舵を切る |
| 調べものに時間がかかる | AI に下調べを頼み、元の文献で確かめる流れ |
一度に全部を、
入れたわけではない
こうして並べると、たくさんの仕組みに見えるかもしれません。けれども、一度に全部を入れたわけではありません。
いちばん困っているボトルネックを一つ見つけ、そこに合う解き方を選ぶ。入れたら、現場で使いながら直す。それが落ち着いたら、次のボトルネックへ。その一つひとつの積み重ねが、いまの形です。
AI で解いたのは、その一部です。電話の自動応答や記録には AI が働いていますが、処置の段取りや一枚の紙のように、道具と手順で解いたところもたくさんあります。何をしたいかを先に言葉にし、AI で解くか、ほかの仕組みで解くかを選ぶ。この順番が、いちばん大切だと考えています。
これらの仕組みが医院の中でどうつながっているかは、つながりの地図にまとめています。
医院ごとに、
入れるものは違う
ここに並べたものを、そのまま持ち込めば同じようになる、というものではありません。医院ごとに、診療の形も、地域も、仲間も違います。
だから、私たちは、まず医院の1日の流れを一緒に見て、どこまでを目指すのかを決め、合う型をお渡しします。そのうえで、院長やリーダーの方が主体的に取り組み、現場で使い、型を直す往復の中で、その医院の形ができていきます。
仕組みの一つひとつには、医院の考え方が入ります。何を人に残し、何を仕組みに任せるのか。その線の引き方こそが、医院らしさになるのだと思います。
まず、
いちばん近い表を一つ選ぶ
まず、四つの表のうち、いまの医院にいちばん近いものを一つ選んでみてください。そこに、明日から見るべきボトルネックがあるはずです。
この考え方を自院でも取り入れてみたい医療機関の方は、「医療機関の方へ」のページからご連絡ください。最初は、医院の1日の流れを一緒に見るところから始めます。
関連して、計画どおりに進まない導入を、どう立て直すかも書いています。
文:小森広嗣(小児外科専門医)
