「業務改善をしたいけれど、どこから手をつければいいか分からない」
前回、人を増やさずに回る医院は、仕組みから始まる、と書きました。そして最初にするのは、道具を探すことではなく、ボトルネック(毎日の診療の中で、時間が消えている所・仕事が止まっている所)を言葉にすることだ、と。
忙しさの原因は、たいてい、どこか一か所に固まっています。だから、いきなり道具を入れるのではなく、まず、毎日の中で何が時間を使い、どこで仕事が動かなくなっているのかを解析する。そこから始めます。
では、そのボトルネックはどうやって見つけるのか。今回は、私が自分の現場で使っている見つけ方を書きます。
ボトルネックは、
毎日の小さな場所にある
忙しい日の外来を思い浮かべると、まず目に浮かぶのは、待合室にあふれる人や、鳴り続ける電話かもしれません。
けれども、本当に一日を重くしているのは、もっと小さな場所であることが多いのです。毎回同じ説明をくり返す。毎回同じ書類を探す。毎回、誰かに「これはどうしますか」と聞かれる。一回は1分でも、一日に何十回あれば、それが外来全体の流れを止めています。
目立つ困りごとは、誰でも気づきます。気づかれにくいのは、毎日くり返している小さなボトルネックです。
見つけ方は、三つの問い
私は、業務を一つずつ書き出し、それぞれに三つの問いを当てています。
| 問い | 見るもの |
|---|---|
| 1. この仕事は、一日に何回あるか | 回数。少ない大きな仕事より、多い小さな仕事のほうが、外すと効く |
| 2. 一回に、何分かかっているか | 時間。感覚ではなく、一度だけでも実際に測る |
| 3. いま、誰がやっているか | 人。院長や看護師が、ほかの人や仕組みに任せられる仕事を抱えていないか |
この三つを並べると、「どの仕事の、何分を、誰から外すか」が見えてきます。業務の棚卸しというと大げさに聞こえますが、やっていることはこれだけです。
紙一枚で始められます。表の行に業務を、列に回数・時間・担当を書く。最初から全部を埋めなくて構いません。今日気づいたものから、一行ずつ足していけばいいのです。
同じ判断を2回したら、
それは型にする
棚卸しをしていて、私が特に気をつけているのは、判断です。
「この場合はどうしますか」と聞かれて、院長が答える。それ自体は大切な仕事です。けれども、同じ質問に2回答えたら、それはもう院長の判断ではなく、医院の決まりにできるものです。
決まりにしたものは、一枚の紙か、手順の章にします。3回目に同じことを聞かれたら、それは仕組みの負けだと考えています。
こうすると、仕事が特定の人にしかできない状態、いわゆる属人化が、少しずつほどけていきます。人を責めるのではなく、型に移すのです。
外し方には、はしごがある
ボトルネックが見つかったら、次は、どこへ外すかです。私は、次のはしごで考えています。
人 → 型(紙・手順・動画)→ 機械(予約・問診・電話の自動応答)→ AI(記録・文書の下書き)
上の段で済むものは、上の段に置きます。紙一枚で解けることに、AI はいりません。逆に、AI を入れてもうまくいかないときは、たいてい、その手前の型ができていません。
そして、人は、核になる仕事に置きます。判断すること、患者さんとご家族の前に立つこと、処置をすること。人に頼るけれど、人だけには頼らない。それが、私の現場の考え方です。
一つだけ、順番で気をつけていることがあります。近いうちに機械や AI に任せる予定の仕事は、新しく人に渡さないことです。せっかく覚えてもらった仕事が、仕組みができた日に消えてしまうからです。
棚卸しは、
続けるほど医院を映す
ただ、一度書き出せば終わり、ではありません。
一つ外すと、次のボトルネックが見えてきます。仕組みを入れた直後は、かえって手間が増える日もあります。私の現場でも、表を何度も書き直し、外したものを元に戻したこともありました。
それでも続けていると、表そのものが、医院の考え方を映すようになります。何を人に残し、何を仕組みに任せるのか。そこには、どんな医療をしたいのかという、院長の考えが出てくるのです。
今日の外来のあとに、
三行だけ
今日の外来が終わったら、「今日いちばん何度もくり返した仕事」を三つ、書き出してみてください。回数と、だいたいの時間と、誰がやったか。それだけで、明日見る場所が決まります。
次は、ボトルネックのなかでも多くの医院で大きい、「電話と問い合わせの窓口」をどう設計したかを書きます。
この考え方を自院でも取り入れてみたい医療機関の方は、「医療機関の方へ」のページからご連絡ください。最初は、医院の1日の流れを一緒に見るところから始めます。
関連して、院長の今日は、三つに絞るも書いています。
文:小森広嗣(小児外科専門医)
