自分のやりたい医療をするために、独立しました。踏み出すときは、相当な勇気が要りました。失ったものもありますが、それ以上に得たものが多く、いまは経営の奥深さに夢中になっています。
勤務医のころに思い描いていた経営と、実際に現場で感じる経営は、ずいぶん違いました。一人の医師の振り返りとして、その違いを書いておきます。
勤務医のころの喜び
勤務医のころの私の喜びは、自分の技術を磨くことにありました。難しい手術ができるようになる。腕が上がる。その結果として、子どもがよくなっていく。順番で言えば、まず自分が伸びることが先でした。
いま振り返ると、この時期はとても大切でした。提供できる力を磨く時期があったからこそ、次の段階に進めたのだと思います。
経営者になってからの喜び
経営に携わるようになって、喜びの順番が入れ替わりました。周りの人が喜んでくれることが、そのまま自分の喜びになるのです。
頼ってくださるご家族が増えるほど、守りたいという責任感が生まれます。続けて満足していただけることが誇りになり、自分が生かされていると感じるようになりました。
そして、それを支えてくれるのは、一緒に働く仲間です。関わる人が皆、気持ちよく働けていること。「なんだか、みんな楽しそう」と感じられること。それが、うまくいっている何よりのしるしであり、私にとってのご褒美になりました。
数字では、心は踊らない
意外だったのは、経営の数字が上がっても、心が踊らなかったことです。経営は一度きりではなく、毎日、毎月、毎年続けていくものです。一喜一憂していられません。経営は遠泳のようだと教わったことがありますが、まさにその通りだと感じています。
競争や順位を気にしていた勤務医のころの気持ちからも、自然と離れていきました。関わる人が幸せでいてくれることが、いちばんの関心事になったのです。
皆が気持ちよく働ける形を、先につくる
皆が気持ちよく働けるかどうかは、一人ひとりの頑張りだけでは決まりません。迷う場面が多ければ、どんなによい人たちでも疲れてしまいます。だから私は、人を増やして支えようとする前に、迷わずに動ける仕組みを先に整えるようにしています。仕組みがあるから、仲間は目の前のご家族に気持ちを向けられます。
コヴィー博士は、人には生きる、愛する、学ぶ、貢献するという四つの欲求があると語っています。経営は、その四つを同時に満たせる場所だと、いまは感じています。歯を食いしばる局面もありますが、それも自分が育つ機会です。だからこそ、やめられません。
関連して、ミッションを、チームの言葉にするも書いています。
この考え方を自院でも取り入れてみたい医療機関の方は、「医療機関の方へ」のページからご連絡ください。
文:小森広嗣(小児外科専門医)
