「お前は向いていない」と言われても、外科医を続けられた理由

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学校を卒業し、憧れの現場に出たものの、思うようにいかない。「こんなはずではなかった」「自分には向いていないのでは」と悩むことは、誰にでもあるものです。

それは、自然なことです。新しい環境に入ると、今までできていたことが急にできなくなったり、自分らしさを出しにくくなったりします。自分とは違うタイプの人が多い職場では、なおさらです。

私自身も、外科医としての道を歩み始めた頃、まさにその壁にぶつかりました。

「苦手」と感じるのは、成長の手前

私が最初に入った外科の世界は、いわゆる体育会系の雰囲気でした。声が大きく、勢いがあって、自信をもって意見を言う人ばかりでした。

私は、どちらかというと真逆の性格です。人前で話すのは苦手で、じっくり考えてから動くタイプです。周りの先輩たちが手際よく動き、はっきりと発言するなかで、私はどうしても一歩遅れました。

実際に「お前は向いていない」と言われたことも、一度ではありません。それでも、不思議と「やめよう」とは思いませんでした。

夢を手放さなかった理由

子どもの頃から、私は子どもたちを治す外科医になることを夢見ていました。性格がどうか、周りと違うかは、その夢の前では小さなことでした。

無理に周りに合わせて、できるふりをすることもしませんでした。自分の性格と真正面から向き合い、この環境の中でどうすれば前に進めるかを考え続けました。

仲間として認められた日

私にできたのは、患者さんとじっくり向き合い、一つひとつの手技を丁寧にこなすことでした。それを続けるうちに、少しずつ周りの見方が変わっていきました。

ある日、先輩から「お前の眼差しはいいな」と声をかけられました。食事に誘ってもらえるようになり、気づけば仲間として受け入れられていました。患者さんから「先生にお願いしたい」と言っていただけることも増えていきました。

向いていないと思っていた場所で、私は自分の居場所を見つけることができたのです。

迎える側にできること

いま、新しく入ってくる人を迎える側になって思うのは、「向いていない」と感じている人の中に、まだ誰にも見えていない強みが眠っていることが多い、ということです。

静かな人の観察力。慎重な人の確かさ。それは、勢いのある職場では見えにくいだけです。迎える側が、その強みを言葉にして本人に返すだけで、その人がそこに居続けられるかどうかが変わります。

周りと違うことを理由に、夢を手放すのはもったいないことです。大切なのは、取り繕うことではなく、自分と向き合い続けることです。そして、それを見ている人が、そばに一人いることです。

関連して、人を見る物差しは、結果より「格闘する姿勢」も書いています。

この考え方を自院でも取り入れてみたい医療機関の方は、「医療機関の方へ」のページからご連絡ください。

文:小森広嗣(小児外科専門医)

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この記事を書いた人

小森広嗣

小森広嗣

小児外科専門医・医学博士。子どものお腹と栄養を、構造と機能の両方から診ている臨床医です。説明を診察室の外にも出し、少人数のチームでも毎日回る仕組みづくりに取り組んでいます。