小児科の医療事務には、未経験から入ってくる人も少なくありません。最初は誰もが「医療用語が分からない」「子どもとうまく話せるか不安」というところから始まります。
育てる側から見ると、身につけてほしい力は、大きく3つに分けられます。
1. 医療事務の基礎知識
医療保険の仕組み、保険請求の流れ、基本的な医療用語、カルテの扱いと個人情報の守り方。これが土台です。
資格の勉強は、知識を体系立てて身につける助けになります。ただ、現場で本当に身につくのは、毎日の仕事の中で「なぜこうするのか」を理解したときです。手順を伝えるときに理由を添えると、覚えるのが格段に早くなります。
2. 子どもと親御さんへのコミュニケーション
小児科では、子どもと親御さんの両方に配慮した対応が求められます。
子どもには、目線を合わせ、分かる言葉で。たとえば「採血」と言う代わりに、「腕から少しだけ血をとらせてもらうね」と伝える。親御さんには、待ち時間や流れを正確に、丁寧に。表情や声のトーンも、大切な言葉の一部です。
この力は、先輩の対応を見て学ぶのがいちばんの近道です。場面ごとの声かけを、チームで言葉にして共有しておくと、新しい人も迷いません。
3. デジタルの道具を使いこなす力
電子カルテ、会計のシステム、予約の管理。医療事務の仕事は、いまや多くの道具の上で動いています。
道具は、正確さを上げ、ミスを減らし、人が人にしかできない仕事に時間を使うためのものです。初めは誰でも戸惑いますが、職場で手順をそろえておけば、少しずつ慣れていきます。
育てる側の仕事
3つの力は、どれも時間をかけて育つものです。育てる側にできるのは、何をどの順番で覚えればよいかを見える形にし、できたことを具体的な言葉で返すことです。
それまでの仕事で身につけた接客の経験や細やかな気配りは、小児科の医療事務でも、そのまま生きます。その強みに気づかせてあげることも、迎える側の大切な役目です。
仕組みがあるから、人が本質に戻れる
3つの力を一人ひとりに教え込もうとすると、育てる側も育つ側も疲れてしまいます。いまは、手順や説明をできるだけ先に形にし、誰が入っても迷わない状態をつくることを優先しています。
便利な道具やシステムは、そのための助けです。道具に任せられることは任せ、人は、子どもと親御さんの気持ちに寄り添う仕事に時間を使う。その分け方が、未経験の人を育てる近道にもなります。
関連して、理念を、明日の行動に落とし込む ── 頑張りが伝わらないときにも書いています。
この考え方を自院でも取り入れてみたい医療機関の方は、「医療機関の方へ」のページからご連絡ください。
文:小森広嗣(小児外科専門医)
