人を見る物差しは、結果より「格闘する姿勢」

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担当している保育園を訪れると、先生方から「小森先生は優しくて、いい先生ですね」と声をかけていただくことがあります。ありがたい言葉です。私も笑顔でお応えします。

それでも、心の奥では、静かな問いが立ち上がります。人の価値は、「優しい」という一言で測れるものなのだろうか、と。

原則は、優しさと厳しさの両面でできている

人は、それほど浅い存在ではありません。本当に大切なことは、表面のやりとりの奥にあります。そして、深く見ようとするほど、「原則」が姿を現します。

原則は、いつも優しさと厳しさが表裏一体になっています。子どもの体のために、つらい検査や治療をお勧めしなければならない日もあります。チームの仲間に、耳の痛いことを伝えなければならない日もあります。だから、ただ優しいだけの医療者というものは、本当はいないのだと思っています。

信頼は、言葉ではなく行動に表れる

私たちは、「信頼」という言葉を少し簡単に使いすぎているのかもしれません。

チームづくりの場面でも、同じことが起きます。面接や最初の数週間で語られる意欲の言葉は、どれも本当です。ただ、信頼が見えてくるのは、もう少し後です。忙しい日に、誰も見ていない仕事をどう扱うか。自分の都合と、チームの都合がぶつかったときに、どちらを選ぶか。うまくいかなかったときに、それをどう話すか。

言葉が悪いわけではありません。言葉はその人の願いで、行動はその人の現在地です。両方を見て、はじめて信頼の形が見えてきます。

ここで大切にしていることが二つあります。人の可能性は見捨てないこと。そして、信頼は行動で見ること。この二つを分けておくと、期待しすぎて落胆することも、早く見限ってしまうことも減っていきます。

私の物差しは、「格闘する姿勢」

では、人の本当の価値は、どこに表れるのでしょうか。

見た目でも、耳ざわりの良い言葉でも、その場限りのテクニックでもありません。私が信頼の物差しにしているのは、その人が、より良くあろうとして日々どれだけ格闘しているか、という姿勢そのものです。

人は、聖人君子ではありません。どれほど良い人に見えても、内側には影の部分があります。逆に、影が濃く見える人にも、必ず光があります。この二面性こそが、人間の本当の姿です。

だから、完璧であることは求めません。大切なのは、不完全さを自覚したうえで、昨日より今日、今日より明日へと、より良くあろうと格闘し続けることです。

格闘とは、頭の中で反省をくり返して立ち止まることではありません。「できたか、できなかったか」の二択で悩み、手が止まってしまうことでもありません。格好悪くても、不完全でも、目の前の現実に本気で取り組んでいく。その熱量の中にこそ、本物の成長と、信頼に足る人の輝きが宿るのです。

結果で裁かない振り返りを、仕組みにする

この物差しを、チームの中で生かすにはどうしたらよいか。私は、振り返りの形を変えることから始めるのがよいと考えています。

うまくいかなかった日の振り返りを、「誰ができなかったか」で終わらせない。何に取り組み、どこで迷い、次に何を変えるか。行動の言葉で振り返る形を、チームの約束として先に決めておきます。迷いやすい場面や手順は、短い言葉にして、いつでも見返せる形に残しておきます。

そうすると、結果だけで人が裁かれることが減り、格闘している人の姿が見えるようになります。仕組みは、人を管理するためではなく、人の格闘を見えるようにするためにあるのです。

3つの物差し

最後に、私が自分に向けて持っている物差しを、3つ書いておきます。

  • 言葉ではなく、行動を見る。とくに、自分の都合とぶつかった瞬間の行動を見る
  • 人の価値を、結果だけで測らない。不完全なまま取り組む姿勢に敬意を払う
  • この物差しを、まず自分に当てる。自分は、信頼に足る格闘をしているか

心地よい言葉に囲まれる関係も、一つの形です。それでも私は、ときに厳しくても、本物の信頼で結ばれた仲間と、医療をつくっていきたいと考えています。

関連して、迷ったら「安全」――チームの価値観に優先順位をつけるも書いています。

この考え方を自院でも取り入れてみたい医療機関の方は、「医療機関の方へ」のページからご連絡ください。

文:小森広嗣(小児外科専門医)

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この記事を書いた人

小森広嗣

小森広嗣

小児外科専門医・医学博士。子どものお腹と栄養を、構造と機能の両方から診ている臨床医です。説明を診察室の外にも出し、少人数のチームでも毎日回る仕組みづくりに取り組んでいます。