休んだ人がいる日でも回る、一枚の紙 ── 医療事務のマニュアルは、判断を要らなくするために作る

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「明日、受付が一人休みます。どうしましょうか」

少ない人数で回している医院では、この一言で、翌日の外来の形が変わります。そして多くの場合、その朝に、院長かリーダーが考えて決めています。

前回、電話の行き先を決めた話を書きました。今回は、人が休んだ日のことです。私の現場では、この日のために一枚の紙を作りました。

迷う判断は、
前もって決めておく

人が休んだ日の判断は、急いで決めることになります。急いで決めると、そのときの疲れや気分で、答えが少しずつ変わります。昨日は受け入れたのに、今日は断った。スタッフから見ると、何を基準にしているのか分からなくなります。

これは、誰かが悪いのではありません。判断を、その場の人に任せている形のほうに無理があるのです。

だから私は、休んだ日にどうするかを、休む前に決めて、紙に書いておくことにしました。

紙の一番上に書いた約束

その紙の一番上には、こう書きました。

この紙は、判断を要らなくするためのものです。人を評価するものではありません。
書いてあるとおりにすれば、その日は正しく回ったことになります。

マニュアルというと、「できているかを確かめるもの」と受け取られがちです。けれども、この紙の目的は逆です。迷わなくていいようにすることです。書いてあるとおりに動いた人は、それで正解。そう約束しておくと、スタッフは安心して紙に頼れます。

誰が休んだかで、
止まる場所が違う

紙を作っていて、いちばん大事だと気づいたのは、誰が休んだかによって、止まる場所が違うということでした。

休んだ人止まる場所紙に書いたこと
受付・事務受付と会計。診られる人数より、受け付けられる人数が上限になるその日の人数の上限を下げる。予約枠を先に閉じる
看護師処置と予防接種処置と予防接種の枠を閉じ、別の日へ。診察の人数は下げない
医師診療そのもの代わりの医師を頼む。立たなければ休診にし、前日の夕方までに決める。無理に開けない

「人が休んだら人数を減らす」と一律に決めると、減らさなくてよい日まで減らしてしまいます。看護師が休んだ日に診察の人数まで下げる必要はありません。どこで仕事が止まるのかを見て、そこだけを閉じる。これも、前回書いた「ボトルネック(毎日の診療の中で、時間が消えている所・仕事が止まっている所)を見つける」の続きです。

断る前に、
入ってこない状態にする

受付が一人の日に、いちばん負担になるのは、来た方をお断りする場面です。断るのは、言う人にとっても、言われる人にとっても、つらいことです。

そこで紙には、先に予約枠を閉じると書きました。断るのではなく、入ってこない状態にする。そうすると、断る場面そのものが減ります。

それでもお断りするときの言い方も、紙に書きました。「いっぱいです」ではなく、空いている日時を先にお伝えする。代わりの選択肢を出すことが、いちばん親切な断り方だと考えています。

そして、数に関わらず当日お受けするものも、三つだけ書きました。ぐったりしている、水分がとれない、呼吸が苦しそう。生まれて間もない赤ちゃんの発熱。けがや出血。迷ったら入れる。ここは、どんな日でも動かさない線です。

書いていない場面に出会ったら

紙は、どれだけ考えて作っても、すべての場面は書けません。だから最後に、書いていない場面に出会ったときのことを書きました。

  1. その場で無理に判断しない。いちばん安全な側を選ぶ
  2. あとで、一行だけメモを残す
  3. 紙のほうを直す。同じ場面が二度来たら、それは紙の足りないところ

そして、こう書き添えました。

意見を出しにくいなら、出さなくて構いません。意見が要らない形にしていくのが、こちらの仕事です。

人に頼るけれど、人だけには頼らない。仕組みを整えるのは、院長の側の仕事です。

紙は、何度も書き直す

この紙も、一度で完成したわけではありません。空欄を残したまま配れないので、決めるべきことを一つずつ決め、ようやく配れる形になりました。配ってからも、メモが来るたびに直しています。

紙が一枚あると、休んだ日の朝に考えることが減ります。その分、残った人は、目の前の患者さんとご家族に向き合えます。そして紙の一行一行には、この医院が何を大切にしているかが出てきます。だれを当日お受けし、何を翌日にお願いするのか。その線の引き方が、医院の考え方そのものなのだと思います。

まず、
「事務が休んだ日」の一行から

まずは、受付・事務が一人休んだ日に、何を閉じるかを一行だけ書いてみてください。一行あるだけで、次にその日が来たとき、朝の相談が一つ減ります。

次は、こうした紙や手順があると、新しい人に教えることがどう変わるのかを書きます。

この考え方を自院でも取り入れてみたい医療機関の方は、「医療機関の方へ」のページからご連絡ください。最初は、医院の1日の流れを一緒に見るところから始めます。

関連して、ミッションを、チームの言葉にするも書いています。

文:小森広嗣(小児外科専門医)

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この記事を書いた人

小森広嗣

小森広嗣

小児外科専門医・医学博士。子どものお腹と栄養を、構造と機能の両方から診ている臨床医です。説明を診察室の外にも出し、少人数のチームでも毎日回る仕組みづくりに取り組んでいます。