クリニックの電話対応は、用件で行き先を分ける ── 受付の手を、目の前の患者さんに戻す

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「電話が鳴るたびに、目の前の患者さんを待たせてしまう」

受付のスタッフから、この言葉を聞いたことのある院長は多いと思います。前回、ボトルネックは毎日くり返す小さな仕事にある、と書きました。多くの医院で、その代表が電話です。

一本の電話は数分です。けれども、鳴るたびに手が止まり、会計が止まり、目の前の方を待たせる。そして電話の内容は、答えられる人が限られていることが多い。電話は、いちばん人に寄りかかった仕事です。

人が入れ替わっても回るように

私の現場で電話の仕組みを見直したのは、人の入れ替わりが重なった夏でした。

人を採り直すことも考えました。けれども、電話を受ける人を増やしても、その人がいつか次の場所へ進めば、同じことがまた起きます。そこで、誰が受付にいても回る形にしようと決めました。電話の一次受けを、AI の自動応答に任せることにしたのです。

ただ、ここで書きたいのは、道具の名前ではありません。道具を入れる前と入れたあとに、何を決めたかです。

最初に決めたのは、
行き先の地図

自動応答を入れて最初にしたのは、電話の用件を書き出して、それぞれの行き先を決めることでした。

用件行き先
予約・予約の変更予約の仕組みへ(音声で案内し、必要なら予約ページの案内をメッセージで送る)
診療時間・休診日音声で答える
事務的なお問い合わせ用件ごとに決めた窓口へ
急ぐ症状・体調の相談受診か、夜間・休日の相談窓口へ。電話の仕組みの中では受けない

この地図ができると、電話は「誰かが出て考える仕事」から、「行き先を案内する仕組み」に変わります。そして、症状や治療の判断は、電話の仕組みでも窓口でも受けず、診察で受ける。ここは、どれだけ仕組みを入れても動かさない線です。

急いでいる人は、
最後まで聞かない

文言を作っていて、いくつも気づいたことがあります。

一つ目は、急ぐ人への案内を、いちばん先に置くことです。最初は、診療時間の読み上げのあとに案内を置いていました。けれども、夜に子どもの具合が悪くて電話をかけてきた親は、診療時間を最後まで聞きません。そこで、夜間の小児の電話相談の番号を、案内の先頭に移しました。

二つ目は、「一度お電話をお切りになり」と必ず添えることです。これがないと、その電話のまま待ってしまう方がいます。

三つ目は、機械の読み方を確かめることです。合成音声に「午前9時から1時」と読ませると、「午前1時」と聞こえてしまう。「午後1時」と書き直しました。記号の入った番号も、ひらがなで書かないと読み違えます。

どれも小さなことです。けれども、電話の向こうにいるのは、困っている人です。仕組みに任せるからこそ、言葉は一つずつ確かめます。

時間外は、折り返さない

診療時間外の電話をどうするかも、考えました。案は三つありました。

案することスタッフの手間
A診療時間を案内して終えるなし
B用件を預かり、翌朝スタッフが折り返す件数の分だけ増える
C用件を聞き、行き先を示して、その場で解決してもらうなし

私は、Bを選びませんでした。折り返しのリストが毎朝できると、それがまた、新しいボトルネックになるからです。

時間外にかかってくる電話の多くは、本当は人に頼まなくても解決できるのに、電話しか入口を知らない、という用件です。行き先を示せば、そこで終わる。だから、目指すのはCです。

ただし、Cは最初から作りませんでした。実際にどんな用件が来ているかを、履歴で見てから作ることにしました。見ないで作ると、作るべき案内を外すからです。

止まる場所も、
先に決めておく

もう一つ、入れてから気づいたことがあります。電話を仕組みに任せると、折り返しや着信の知らせがどこに届き、誰が一日に何回見るかが、新しい要になります。そこが途切れると、全部が止まります。

仕組みを入れるときは、うまくいく流れだけでなく、どこが切れたら止まるのかも、一緒に決めておく必要があります。

使いながら、
言葉を直していく

入れた直後は、文言を何度も直しました。案内と動きが合っていない場所も見つかりました。私の現場で「うまく回ってきた」と感じられたのは、入れてから2か月ほどたった頃です。

それでも、受付の手が電話から離れると、目の前の患者さんとご家族に向き合う時間が戻ってきます。仕組みは、その時間を支える土台です。そして、どの電話を機械に任せ、どの相談を診察で受けるのか。その線の引き方にこそ、医院の考え方が表れるのだと思います。

まず、
一週間分の電話を書き出す

まず一週間、かかってきた電話の用件を、正の字で数えてみてください。いちばん多い用件の行き先が決まれば、それだけで受付の手は少し軽くなります。

次は、休んだ人がいる日でも回るように、私の現場で作った「一枚の紙」のことを書きます。

この考え方を自院でも取り入れてみたい医療機関の方は、「医療機関の方へ」のページからご連絡ください。最初は、医院の1日の流れを一緒に見るところから始めます。

関連して、計画どおりに進まない導入を、どう立て直すかも書いています。

文:小森広嗣(小児外科専門医)

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この記事を書いた人

小森広嗣

小森広嗣

小児外科専門医・医学博士。子どものお腹と栄養を、構造と機能の両方から診ている臨床医です。説明を診察室の外にも出し、少人数のチームでも毎日回る仕組みづくりに取り組んでいます。