予約が入ったあと、受診の日までのあいだに、ご家族にお届けしている説明があります。短い動画がいくつかと、読むための記事、そして当日のお願いです。
中身と同じくらい大切にしているのが、並べる順番です。同じ説明でも、順番が変わると、届き方が変わります。いまの形になるまでに、何度も並べ替えてきました。
最初に、「なぜ前もって見てほしいのか」を伝える
いきなり動画を並べても、見ていただけるとは限りません。だから最初に、理由を一言添えます。
限られた診察の時間を、その子に合った計画づくりに使いたい。そのために、どのご家族にも同じようにお伝えしている大切な話を、先に受け取っていただきたい。
理由が分かると、「見ておかなければならない宿題」ではなく、「その子のための時間を増やす準備」として受け取っていただけます。
不安から、理屈へ、道のりへ
説明を並べる順番は、ご家族の気持ちの順番に合わせています。
一つめは、不安を整理する話です。「なぜうちの子だけ」「このままで大丈夫なのか」。来院前のご家族の多くは、そこにいます。まずその不安に寄り添うところから始めます。
二つめは、治療の理屈です。体の中で何が起きているのか。なぜその治療をするのか。不安が少し落ち着いてから届けると、理屈が入っていきやすくなります。
三つめは、進め方と道のりです。良くなったり、また揺り戻したり。一進一退しながら進んでいくことを、先に知っておいていただく。これがあると、途中でうまくいかない時期が来ても、「やっぱりだめだ」と思わずにすみます。
最後に、よくある誤解をほどく話を置きます。誤解は、理屈と道のりが分かったあとのほうが、ほどけやすいのです。
診察室の外でも続く、役割の分担を伝える
次にお伝えするのが、役割の分担です。診察室では、医師が医学的な判断と方針を決めます。診察のあとは、資料やメッセージで、家で続けるための支えをお届けします。じっくり相談したいことがある方には、別に時間を用意しています。
これを先に知っていただくと、「診察が短い」とは感じにくくなります。診察室だけで全部を終わらせるのではなく、外でも支えが続いていることが分かるからです。
当日のお願いは、短く
当日に用意していただきたいものは、短くまとめます。たとえば、ふだんの様子の記録や、飲んでいるお薬が分かるもの。お願いが多すぎると、肝心の準備がぼやけてしまいます。
もっと知りたい方への入口は、最後に
もっと詳しく知りたい方のために、まとめて読める入口を最後に置いています。全部を読む必要はなく、気になるところだけめくっていただければ十分です、と添えます。
最初に置くと、量に圧倒されてしまいます。最後に置くと、興味を持った方だけが、自分の速さで進めます。
当日、「見てきましたか」と尋ねる
そして受診の日には、受付で「動画はご覧いただけましたか」とお尋ねしています。責めるためではありません。見てきていただいた前提で、診察を始めるためです。
まだの方には、待ち時間に見ていただくこともできます。「見てきました」から始まる診察では、その子のための次の一手を、最初から一緒に考えられます。
順番も、仕組みにしておく
この順番は、毎回その場で考えるものではありません。一度決めた並べ方を、外来ごとの型として持っておく。そうすれば、誰が送っても、同じ順番で、同じように届きます。
人を増やして同じ説明を分担する前に、説明の並べ方を仕組みにしておく。仕組みがあるから、人は、目の前の子どもと家族に向き合う本質の仕事に戻れます。
関連して、説明を、診察室の外に置く ── 事前教育型の医療のはじめ方も書いています。
この考え方を自院でも取り入れてみたい医療機関の方は、「医療機関の方へ」のページからご連絡ください。
文:小森広嗣(小児外科専門医)
